ヒメコウホネが危ない!?

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ヒメコウホネが危ない-その2

こんどはヒメコウホネの産地の現状をここでは取り上げたいと思います.

コウホネ属に限らず,水辺の植物は現在,危機的な状況に陥っています.その理由は色々考えられますが,だいたい

 ・開発・・・埋め立て,湖岸改修,集水域の開発
 ・利用方法の変化・・・過剰な農業用水としての利用(ため池などでは激しい水位変動を招く)
 ・周囲の環境・・・汚水(生活廃水,農薬など)の流入
 ・外来種の大繁茂・・・アクアリウムなどで持ち込まれた水草が帰化種として野外で大繁殖(例:コカナダモ,オオカナダモ,オオフサモ,ボタンウキクサ,ホテイアオイなど)

などではないでしょうか.特に平野部の水辺というのは色々な意味で汚染されやすく,環境の変化に敏感な種は姿を消しています.現在では日本にみられる水草(狭義)のうち,約1/3が絶滅が危惧されている事態になっています.

外来種の大繁茂の写真を以下に載せます.写っている緑色の部分はほとんど外来種です.
 コカナダモ大繁茂の図.(三重県)

 フサジュンサイ大繁茂の図.(新潟県新潟市)

 ホテイアオイ大繁茂の図.(徳島県徳島市)


では,コウホネの仲間たちの現状はどうなのでしょうか.環境庁版のレッドデータブックでは

絶滅危惧U類(VU)
 オグラコウホネ(Nuphar oguraense
 ネムロコウホネ(Nuphar pumilum
 オゼコウホネ(Nuphar pumilum var. ozeense
 ヒメコウホネ(Nuphar subintegerrimmu

と3種1変種が挙げられています.しかし現在ではコウホネも多くの河川,ため池で消滅しています.

このようにヒメコウホネは絶滅危惧U類と非常に危機的状況にあることがわかっています.
さて,先ほどヒメコウホネには「東海型(=狭義のヒメコウホネ)」と「西日本型」という2型があることは紹介しましたが,東海型(=狭義のヒメコウホネ)」に限ると,現在は数産地(私が把握しているもので3-4産地)しか残っていないんです(もちろん西日本型も産地は少数です).
ヒメコウホネ内での問題が解決する前に,絶滅してしまう可能性が非常に高い状況です.

また,コウホネ,ヒメコウホネ共に遺伝的な分化が地域ごとにみられ,各産地がそれぞれ独自の歴史性を持っている可能性が示唆されるデータも得られています.
今後,その様な視点からの保全が求められるでしょう(その様に保全して欲しいです).

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