長澤研究室の紹介です


*研究室の取り組み

*専門領域 :障害のある子ども(人)の自立とノーマリゼーション

*担当授業:障害児教育学

*主な論文:特別支援教育、個別の教育支援計画、特別支援教育の指導モデル

*学会発表

*著書

*業績一覧


1.専門領域

 (1)自閉症や知的障害のある子どもの言語・コミュニケーション訓練
 自閉症や知的障害のある子ども、ことばの発達に遅れのある子どもに対する言語・コミュニケーションの指導をいかに行うかを研究しています。特に、日常生活の中で、自然な関わりの中で指導することを重視しています。
 言語訓練に関する資料はこのページをご覧ください。

 (2)個別教育計画と個別の教育支援計画、指導計画
 個々のニーズに応じた教育や指導はどうあればいいのか、アメリカの個別教育計画(IEP)の目的や実際の様子について調べています。さらに、実際の授業の中で、個々に応じた指導をいかに行っていくのかを、実際に個別の指導計画を作成し、実践しています。さらに、今後は特別支援教育推進の条件である「個別の教育支援計画」についても研究を進めています。

 (3)統合教育と交流教育
 通常の学級で、障害のある子どもが障害のない子どもと一緒に教育を受ける「統合教育」について、アメリカの現状を分析するとともに、特別支援教育が統合教育として展開するための条件等について考えていきます。
 さらに、特別支援教育を展開する上で必要となるチームアプローチについて、COMPASという新たな指導もデルに基づく実践研究を推進しています。COMPASを詳しく知りたい方はここをご覧ください。
 

 (4)学習障害をはじめとする軽度発達障害のある児童生徒の指導法
 学習障害やADHD、アスペルガー障害などのある児童生徒の指導法について研究しています。とくに、子どもたちが自分で自分の行動管理(セルフマネジメント)ができるようになるための指導や、人とうまくつきあっていくための指導、問題行動への対応を研究しています。
 LD、ADHDの指導に関する著書はここをご覧ください。講演会の資料はここをご覧ください。

          


2.最近の論文・学会発表
 私が発表した論文や学会発表のタイトルと概要です。詳しい内容が知りたい方は、メールでお問い合わせください。論文の別刷が必要な方は、B5サイズの返信用封筒同封(120円切手を貼る)の上、住所と名前を書き、ご請求ください。
 なお、論文によっては、アクロバットリーダーで表示されます

・『読み書き障害の児童に対する音読と作文による読み書き指導』
渡邊正基・長澤正樹(2007)、LD研究,16(2),145-154.


 読み書きに困難を有する学習障害およびその周辺の児童2名に対して,読解力の向上を図るため,読み聞かせを,書く能力の向上を図るために作文を個別に指導した。視覚認知では,ことばに対する意識を高めるために聞き取りの訓練を実施し,音への関心を高めるように指導した結果,文章の読みと作文能力の向上が認められ、指導の有効性が確認された。

『特別な教育的支援を要する児童に対する自発的な援助要請行動、話しかけ行動獲得の指導―情緒通級指導教室と通常学級との連携による般化の促進―』
 高橋豊・古田島恵津子・長澤正樹(2007):日本行動教育・実践研究,27,1-5
.
 通常学級に在籍する特別な教育的支援を要する小学校6年の児童に対して、自発的な援助要請行動の獲得を目的とし、情緒通級指導教室を中心に指導した。指導方法は、@通級指導教室では、小グループによるSST(問題場面の提示、目標設定、ロールプレイ、評価)、A通常学級では支援者による援助要請行動支援とゲームによる援助要請指導、B家庭では学習したスキルの般化指導であった。その結果、友達への援助要請回数が増えるなど、援助要請行動の獲得が見られるようになった。

・『発達障害のある子どもの教育を保障する道具−特別支援教育における個別の教育支援計画と個別の指導計画の在り方−』
 長澤正樹(2007):新潟大学教育人間科学部紀要、第9巻第2号,191-206.

 アメリカの統合教育の現状と推進のための条件、我が国の特別支援教育の理念と推進のための条件を解説し、発達障害のある子どもの教育を支援する道具としての支援計画の意義を訴えた。さらに、子どもの現機能分析からできること、できそうなこと、必要なことを明確にする過程を通して、個別の教育支援計画と指導計画の作成方法を、さまざまな発達障害を例に解説した。最後に、個別の教育支援計画作成にかかわる課題をまとめた。

・『発達障害を支援する道具としての個別計画』
 長澤正樹(2007):IEP JAPAN、第21巻,18-23.

 特別支援教育と個別の教育支援計画の関係、発達障害を支援する道具としての個別計画の意義、個別計画の具体的な作成方法、そして自立活動における個別の指導計画の作成と今後の課題について解説した。

・『新潟大学方式親支援プログラム(NIP-SKIP)の有効性』
 長澤正樹・谷崎美菜(2006):発達障害支援システム学研究、第5巻、第2号,15-22.

 発達障害のある子どもを持つ親を対象に、子どもとのかかわり方を学ぶ訓練プログラム(新潟大学方式親のスキル訓練プログラム、通称NIP-SKIP)を開発した。プログラムは応用行動分析の理論に基づく子どもへのかかわり方の学習(講義と演習)、個別の指導計画の作成、日常生活での実践、報告会(実践の評価)で構成された。さらに、36名の発達障害のある子どもを持つ親を対象に4回シリーズのプログラムを実践し、アンケート調査と報告会の内容を分析しプログラムの有効性を検証した。その結果子どもの問題行動の改善や親の肯定的な変化が報告され、プログラムの有効性が確認された。

・これからの特別支援学級担任に求められること
 長澤正樹(2006):特別支援教育研究,592,6-9.
 これから特別支援学級の担任をめざす人を対象に、必要とされる指導力や資質、そして実際になった場合の行動指針について解説した。

・新たな行動コンサルテーションモデル:COMPASによる問題行動の支援−通常学級に在籍するADHDのある児童を対象に
 古田島恵津子・長澤正樹・松岡勝彦(2006)、LD研究、第15巻、第2号、171-182頁。

ADHDのある児童を対象に、新たな行動コンサルテーションモデルであるCOMPASを適用し、問題行動を支援した。その結果、2名の対象児童の問題行動の改善が見られ、かつ小学校教師がこのモデルの有効性を高く評価した。このことからCOMPASの有効性が確認された。

軽度発達障害のある中学生グループ活動のスタッフによるかかわりの有効性。:日本行動教育・実践研究,26,13-17.
 平林智咲・長澤正樹(2006)
 軽度発達障害のある中学生の活動を通して、スタッフのかかわりが1名の高機能自閉症の生徒の言語的・非言語的コミュニケーションを変化させることができるか観察した。その結果、スタッフが一人一人のペースに合わせて対応すること、参加者の興味のある話題提起、文章レベルの返答を期待した内容の発話が有効であることがわかった。

特別支援教育を推進するための親のパートナーシップの在り方−小学校における親の学習支援ボランティアの実践と課題−:新潟大学教育人間科学部紀要,8(1),1-6.
 長澤正樹(2005)
 親が小学校通常学級の学習支援を実施している新潟市立笹口小学校の実践を紹介し、担当職員に対するインタビュー結果から、親が学習支援ボランティアとして通常学級の学習支援を実施する場合の課題と条件を考察した。

・軽度発達障害の中学生の指導:季刊「特別支援教育」,18,46-51
 長澤正樹(2005)
 軽度発達障害のある中学生の指導について、以下の項目で解説した。1 この時期の特徴と指導上の留意点、 2 支援体制、 3 学習指導の実際、 4 問題行動への対応の実際、 5 人間関係の育成、 6 進路指導の実際
 (資料請求はご遠慮ください)

・知的障害のある生徒に対するトランプゲームスキル獲得指導−学童保育における実践を通して−:日本行動教育・実践研究,25,17-21.
 横山恵子・長澤正樹(2005)
 知的障害のある中学1年男子生徒に対して、養護学校での学童保育の場で、トランプゲームスキルの獲得をめざし指導した。指導したトランプゲームは、ババ抜き、7並べ、スピードの3種類であった。指導には勝つための手がかりを教える支援ツールとして「方略ブック」を導入し、指さしや言語プロンプトを適宜使用した。その結果、3種類のトランプスキルを獲得し、勝つための方略も使用できるようになった。さらに、養護学校での自由遊びにおける遊びの質に変化が見られた。

・LDのある中学生男子生徒を対象とした接触行動の低減と社会的スキル獲得の支援:日本行動教育・実践研究,24,23-33.
 谷崎美菜・長澤正樹(2004)
 異性に対して接触行動が見られるLDの中学生男子生徒に対して、セルフマネジメント、トークンシステムなどによる行動の改善に取り組んだ。その結果、接触行動の減少が見られた。さらに、自己評価と第三者評価の一致率が高くなり、取り組みへの客観的な評価ができるようになった。

・COMPASの理念と方法、実践例:日本行動教育・実践研究,24,15-19.
 古田島恵津子・長澤正樹(2004)
 同級生に暴力を振るうADHDの児童に対して、COMPASの理念に基づいて取り組んだ。行動分析による技法、チームアプローチ、個別の指導計画の作成、保護者との協働作業などにより、問題行動を改善することができた。

・教室で気になる子どもの支援と行動教育:日本行動教育・実践研究,24,1-10.
 長澤正樹(2004)
 LD、ADHD、アスペルガー障害の子どものとらえ方と支援の基本を解説した。

・特別支援教育を推進するために何が必要か −カリキュラム、支援、教育措置の決定について−:新潟大学教育人間科学部紀要,6(2),239-248.
 長澤正樹(2004)
  特別支援教育の実施に必要と考えられる支援と教育措置をいかに決定するか、その過程と手続きを提案した。特別支援教育は通常の学級での教育が基本となり、子どものニーズに応じた支援を検討することになる。そこで、カリキュラムの修正やさまざまな支援、そして教育措置の決定について紹介した。さらに、これらを保障するための個別の教育支援計画を私案として提示した。最後に、特別支援教育推進における今後の課題を考察した。
<個別の教育支援計画の例(私案)>

・自閉症の児童の清掃スキル獲得に対するセルフマネージメントの効果:特殊教育学研究,41(4),425-432.
 澄井友香・長澤正樹(2003)
 訓練開始時11歳10ヶ月の自閉症の児童に対して、自発的に清掃する清掃スキルの獲得を目的として訓練した。訓練には活動手続きが理解できるよう絵カードによるセルフモニタリングとそのための訓練を導入した。さらに、活動への動機付けを高めるために分割強化子を使用した。約3ヶ月の訓練の結果、対象となる児童は清掃活動のモニタリングと清掃活動を自発的に行うことができるようになった。この結果から、清掃活動の獲得にセルフモニタリングが有効であったことが考察された。

・大学教員の行動コンサルテーションによる地域の障害児教育支援モデル:COMPAS―障害のある子どもを持つ保護者・担任教師・周辺市町村の教師を対象に―:新潟大学教育人間科学部紀要,6(1),11-22.
 長澤正樹・松岡勝彦(2003)
 特別支援教育の実施に当たり、支援を必要とする子どもへの新たな教育モデルが必要である。そこで、大学教員が学校や家庭など、地域社会の中で支援することにより、障害のある子どもの成長と子どもを含む様々な関係者のQOLの向上に貢献することを理念とし、それを実現するためのシステムとしてCOMPASを紹介した。
<本文><図1><図2><表1>  クリックすると論文と図、表が表示されます。

・軽度発達障害のある子どもの教育と医療(エッセー):新潟小児科医会会報,31,7-9.
 長澤正樹(2003)
 (小児科医会の著作権のため、内容は私まで問い合わせてください)

・重度知的障害のある子どもを対象とした自己選択行動アセスメントマニュアルの作成(論文):新潟大学教育人間科学部紀要,5(2),49-55.
 長澤正樹(2003)
 重度知的障害のある子どもの自己選択行動を教師が支援するために、自己選択行動アセスメントマニュアルと記録用紙を開発した。対応マニュアルは以下の原則に従って作成された。子どもの日常生活全般にわたり選択の機会を保障すること、子どもが現在可能な選択手段を活用すること、Bambara & Koger(1996)の方法に従い、子どもが選択できるような支援手続きを使用すること、選択後のリスク管理が可能になるよう配慮すること。最後に、重度知的障害のある人の社会的自立と自己決定について考察した。

・学習障害のある児童への支援事業に対する小学校教師の意識(論文):新潟大学教育人間科学部紀要,5(1),55-59.
 長澤正樹(2002)
 新潟県教育委員会が実施する「新潟県学習障害児(LD)に対する指導体制の充実事業」に対して、研究協力校となった小学校教師を対象とし、LDへの支援を行うに当たり検討すべき内容についてアンケートにより調査した。その結果は、教師の対応、学校全体の対応、行政機関の対応、専門機関の役割、そして専門家チームへの要望に分けて集約した。緊急に取り組むべき課題として、LDの理解啓発活動の推進、校内委員会の設置、指導の場の確保、専門機関との連携があげられた。

・学習障害のある子どものセルフマネージメントの指導−親の会が主催する検討会議による個別の指導計画の作成と評価−(論文):発達障害支援システム学研究、1(2)、43−50.
 長澤正樹(2002)
 学習障害(LD)のある児童生徒を対象に、セルフマネージメントスキル指導を目的としたITPを作成し、その効果と作成手続きについて評価した。ITPは親の会が主催するITP検討会議で作成し、作成システムの有効性についても検討した。4名の児童生徒を対象に、セルフマネージメントに関する10点の短期目標を設定したITPを作成し、約4ヶ月指導した。その結果、6点の短期目標の達成が確認された。また、ITP検討会議の参加者による意識調査では、この会の有効性を支持する意見が得られた。結果から、LDのある児童生徒に対するセルフマネージメントの指導のあり方を考察するとともに、専門家や親などチームによるIEPの作成および作成システムの有効性と必要性を確認した。

・エンパワーメントによる無力化の改善と応用行動分析による評価(論文):矯正教育研究、47,75−80.
 中島学・長澤正樹(2002)
 本研究では、「無力化」を問題解決への意欲を減退させ、社会からの孤立化を進める要因としてとらえ、これに対抗するエンパワーメントという視点から矯正教育の行政目的をとらえなおした。その結果、矯正教育の活動は「無力化」にさらされている被収容少年の内面をエンパワーメントし、問題が山積する社会を主体的に生活できる技能の習得を促進させるため、被収容少年らが問題に対応できるような「適応力」を高める必要があることが示唆され、この適応力を高めるための訓練方法及び獲得の程度を評価するために手段として追うよう行動分析が有効であり、この方法によれば処遇の達成度が客観的な数値により評価でき、処遇技法や教材の標準化の可能性が示唆された。

・学習障害児親の会と一緒に作る個別教育計画(論文):日本行動教育・実践研究、22,1−6.
 長澤正樹(2002)
 学習障害児親の会が主催する事例検討会で、個別教育計画を作成した。個別教育計画作成手続きと評価手続き、学習障害のある児童のソーシャルスキルの獲得のための個別教育計画を紹介した。

・個別の指導計画の現状と課題(論文):新潟大学教育人間科学部紀要、4(1)、1-22.
 長澤正樹(2001)
 はじめに、障害のある人の教育法(IDEA)改訂による個別教育計画(IEP)の内容を解説するとともに、日本の特殊教育でも、IEPに相当する教育計画が必要であることを述べた。つまり、現行のカリキュラムの中で個々の児童生徒のニーズに対応した指導を、いかに確保し実施するかを記載した文書が個別の指導計画だといえる。次に、個別の指導計画の様式と内容を解説した。さらに、現在作成されている個別の指導計画の具体例とその特徴を述べた。最後に、個別の指導計画作成に関わる問題とその対応についてまとめた。

・Specail Education から Specially Designed Instruction へ −社会的不利益を保障するIEPと応用行動分析(論文):日本行動教育・実践研究,21,4-6.
 長澤正樹(2001)
 知的障害のある人が知的障害ゆえに社会的不利益を被らないためにスキルの獲得と支援が必要となる。一人一人に対応したスキルの獲得訓練と支援を明確にした計画書としてIEPがある。IEPは子どものニーズから目標を決め指導するという目標準拠モデルに従っている。目標の設定から指導方法の立案に、応用行動分析の果たす役割は大きい。

・重度知的障害のある児童生徒を対象とした自己選択の実態−養護学校における食事と遊び場面に基づく調査研究(論文):発達障害研究,23(1),54-62.
 長澤正樹(2001)
 調査への協力が得られた3校の養護学校に在籍する131名の重度知的障害のある児童生徒について、自己選択行動に関する調査を実施した。食事と遊び場面に関する自己選択行動の有無、種類、わかりやすさ、支援の方法について38名の教師に対し、普段の観察による回答を求めた。自己選択行動の種類は、Hughes, et al.(1998)による6種類の分類に従った。結果から以下のことが明らかになった。(1)回答が得られた多くの児童生徒において、食事と遊びについて自己選択が可能であると評価された、(2)選択の手段には食事・遊びと共に、つかむことが最も多く評価され、(3)教師は選択が可能になるよう様々な支援していることである。最後に重度知的障害のある児童生徒の自己選択支援について、選択手段の種類、活動の性質による差、支援のあり方について考察した。

・言語訓練と、言語訓練を目的とした個別教育計画作成のためのホームページ」(論文):新潟大学教育人間科学部紀要,3(2),229-241.
 執筆:長澤正樹(2001)
 本研究の目的は、自閉症や知的障害のある子どもを対象とした言語訓練のためのホームページを作成することであった。まず、多くの文献から言語発達段階表と、それぞれのコミュニケーション行動に対応した指導内容例を作成した。ホームページ上では、言語発達段階表の指導項目から指導内容例にリンクできるように設定した。さらに、ホームページを使って言語訓練のための個別教育計画(IEP)を作成できるようにした。今後の課題として、プログラムの有効性、アセスメントの手続き、サポートシステムがあげられた。

・「中途障害のある児童に対し情緒の安定を目的とした指導法」:日本行動教育・実践研究,20,11-15.
 執筆:戸川真弓、長澤正樹
 交通事故による中途障害のある男児に対して、情緒の安定を図る指導を行った。指導は、行動観察による状況の分析、情緒変容の段階的分析、それに対応した支援のマニュアル化という手続きに従って行った。約4ヶ月間の指導を行った結果、この男児は情緒が安定し、自分自身でコントロールできるようになった。結果から、指導のマニュアルかと今後の課題について考察した。

・「自閉症の子どもの言語獲得と認知発達の関係(T)」:新潟大学教育人間科学部紀要,2(2).133-138.
 要旨: 自閉症の子どもについて、ことばの獲得と認知発達の関係を調査した。就学時点でことばを獲得していなかった5名の自閉症の子どもを対象に、言語発達と認知発達を調べた。その結果、3名が小学部段階でことばを獲得し、2名は卒業までにはことばを獲得できなかったこと、ことばを獲得したグループは就学時点で感覚運動期段階Yであったことがわかった。この結果から、感覚運動期段階Yはことばの獲得のための必要条件であること、就学時点で感覚運動期段階Yを獲得している自閉症の子どもは、6歳以降でもことばの獲得が可能であることなどが明らかになった。

・「通常の学級に在籍する障害のある児童の支援に関する研究」:新潟大学教育人間科学部紀要,2(1),15-20.
 執筆:長澤正樹、皆川幸子
 要旨:本研究は、新潟市内の小学校教師に対して、通常の学級に在籍する障害をもつ児童の実態と現在行われている支援及び今後望まれる支援の調査を通して、通常の学級に在籍する障害をもつ児童への支援のあり方を検討した。その結果、障害をもつ児童の割合は平均1.6%であること、担任が中心にほとんど毎日学習への支援を行っていること、学習面での個別指導の必要性を感じていることなどが明らかになった。これらの結果から、今後必要と思われる課題について考察した。

・ 「交流教育の実際と統合教育に対する小学校教師の意識−新潟市における調査−」:新潟大学教育人間科学部紀要、1(1)、1−10.
 要旨:本研究は、小学校での交流教育の現状と小学校教師の統合教育に対する意識を明らかにすることを目的とした。調査の対象は、新潟市内小学校の障害児が在籍する通常学級担当教師と特殊学級担当教師であった。調査者は教師に対して直接面接をし、現在行われている交流教育の現状と、統合教育に対する意識及び統合教育を推進のための条件などを質問した。その結果、以下のことが明らかとなった。1)特殊学級在籍児童が通常学級で学習する教科は約3教科であること、2)ほとんどの教師が統合教育を知っているが完全な統合には消極的であること、3)統合教育を推進する条件として複数担任制とリソースルームの設置が必要だと考えていること。

・「社会的有価値化に基づく矯正教育の展開と応用行動分析学による評価」:新潟大学教育学部紀要,39(2),265-269.
本研究では、Wolfensberger(1994)のいう社会的有価値化により矯正教育の目的をとらえ直した。その結果、矯正教育の活動は価値を引き下げられている被収容少年の社会的価値を引き上げる必要があり、その具体的な目標として被収容少年らが価値ある役割をよりこなせるように「適応力」を高める必要があることが明らかになった。また、この適応力を高めるための訓練方法及び獲得の程度を評価するための手法として応用行動分析学が有効であり、この方法によれば処遇の達成度が客観的な数値により評価でき、処遇技法や教材の標準化が可能なることが判明した。

・「自閉症児の言語訓練における個別教育計画と指導の形態の分析」:新潟大学教育学部紀要,39(1),11-17.
 本研究では、学校教育場面での自閉症児に対する自然な言語訓練を行うための具体的な方法を解説した。目的は次の3点である。(1) 学校教育場面で行われている言語訓練の分析、(2)代表的な言語訓練方法と指導の形態の分析、(3)個別教育計画の作成手続き。

3.著書

 発達障害の子を育てる家族への支援。 柘植雅義・井上雅彦・長澤正樹他著 金子書房

 発達障害の子どもを指導する指導モデルを解説し、そのモデルに基づく発達障害の親の会と連携して開催している事例検討会と、事例検討会を通して作成・評価している個別の指導計画について紹介した。

「知的障害援助専門員養成通信教育テキスト2007 B事例研究」 財団法人日本知的障害者福祉協会
 「第1章事例研究を実践に生かすために」を担当した。事例研究の意義と目的、データの取り方とその分析方法、事例研究会の実際について解説した。

「中学・高校におけるLD・ADHD・高機能自閉症等の指導−自立をめざす生徒の学習・メンタル・進路指導−」:東洋館出版社
 自己決定、進路指導の一部を担当しました。

「スクリプトによる社会的スキル発達支援」:川島書店
 第10章「様々な場面での社会的スキル獲得支援」と、いくつかのスクリプトを担当した。小学校通級指導教室の指導例、大学でのチャレンジルームの指導例をまとめた。

「ひとりでできる力を育てる」増補改訂版 川島書店
 第1章 LDのとらえ方と支援、第2章 特別な支援を必要とする子ども、第3章 問題解決を目指す指導モデル、 第4章 LDのある子どもへの支援の基本、 第5章 自己決定とは、 第6章 自分で問題を解決することとは?、 第7章 自己選択、自己教示、セルフモニタリング、自己評価、自己強化、 第8章 人とのかかわりにおける問題を解決する、 第9章  問題行動への対応、 第10章 教科学習への対応、 第11章ADHDへの対応、 第12章 アスペルガー障害(高機能自閉症)への対応、 第13章 応用行動分析の技法、 第14章 目標設定と評価、 第15章 「いなほの会」の紹介、 第16章 個別教育計画の作成、 第15章 いなほの会による実践例

「こうすればできる問題行動対応マニュアル:長澤正樹他 川島書店
特別な教育的支援を必要とする児童生徒がクラスに1人はいるという今日の教育現場では、〈ダメな子〉とみなされている児童生徒はもとより、担任、保護者、クラスメートの誰もが〈困り感〉を感じています。
本書は、「連携」と「協働」を特別支援教育のキーワードと考えている研究者が、支援を必要とする児童生徒に対し、学校を中心として教育委員会、福祉、医療、労働そして大学等が、いかに連携・協働して支援をしていくかを実践例をとおして紹介します。また、最近再評価されてきている「応用行動分析学」をバックボーンに、ひとつひとつの指導技法や支援の方法を、平易にかつ具体的に解説します。
これまでに障害児教育の経験のなかった〈困り感〉を感じている通常級の先生方はもちろん、保護者、指導員、学生への支援の基本書・入門書。

「特別支援教育ハンドブック」:特別支援教育研究会編 第一法規
 特別支援教育にかんするあらゆる情報が掲載されています。長澤は障害のある児童生徒の信徒及び進路指導を担当しました。

「特別支援教育を支える行動コンサルテーション」:加藤哲文・大石幸二編 学苑社 
 大学と教育現場、そして保護者とが協働で子どもを支援するCOMPASの理念と具体的な指導方法を解説し、新潟県内での取り組みの実際、個別の教育支援計画を紹介した。さらに、関係者への意識調査からこの指導モデルの有効性を考察した。

「LD・ADHD〈ひとりでできる力〉を育てる指導・支援・個別教育計画作成の実際」:長澤正樹 編著 増澤菜生・松岡勝彦・細井恵美・沼田夏子 共著。川島書店。
 今日の教育現場で、いまやすべての学校に在籍しているLD、ADHD、アスペルガー障害、高機能自閉症、軽度知的障害などと呼ばれる子どもたちと、どのようにかかわり、どう指導すればよいのか。〈自分でできる〉という彼らの自己肯定感を高め、自分自身でものごとを解決する力を育てる有効な指導・支援の方法をわかりやすく解説する。

「個別教育計画のための初めての特別なニーズ教育」:高山佳子編、川島書店。定価2200円。
・今日、世界の国々の障害児教育は特別なニーズ教育へと大きく変わろうとしている。わが国の学校現場においても、障害児はもとより、不登校・いじめ・多動・学習障害など、教育的ニーズをもつ子どもが増えており、何らかの教育的手だてや配慮の必要性が強く求められるようになってきている。
 本書では、このような子どもたちに対する援助を特別なニーズ教育という新たな枠組みから捉えなおし、その概念、制度、指導の原理、指導の視点・方法、就学前から成人期への移行期の福祉的視点からの対応を解説し、援助の実際を具体的に理解できるように編集されている。
 特別なニーズをもつ子どもの教育にたずさわる教師、学生、指導員、ボランティアへの平易な入門書。(本書の紹介文より)
・なお、長澤が執筆したのは、「第3章特別な教育的ニーズを持つ子どもの指導の原理と方法」の中の、「第1節指導の原理」「第2節指導方法」「第3節個別指導計画の立案」である。

4.学会発表

・Nu-LATプログラムによる自閉症の幼児を対象とした言語指導
長澤正樹(2007) 日本特殊教育学会

・保育所・特別支援学校・大学のCOMPASによる取り組みの有効性−自閉症の幼児への言語訓練を目的とした事例検討会を通して−
 金谷篤・長澤正樹(2007) 日本特殊教育学会
 行動コンサルテーションモデルの一つであるCOMPASに従い、保育所・特別支援学校・大学がチームを設置し、自閉症の幼児の言語指導に当たった事例である。

・eラーニングを介した特別支援教育における分散的知識の蓄積
永森正仁・安藤雅洋・長澤正樹・ソンムァンポクポン・植田真臣(2007)  第55回日本工学教育学会
 附属特別支援教室の指導(問題行動)について、eラーニングを使用して問題を分析し指導計画を立てるシステムについての研究発表です。

・障害のある子どもと関わる教師や親への支援を目的とした協働モデル(COMPAS)による問題行動の支援:日本LD学会第15回大会シンポジウム
 長澤正樹(2006)発表資料 発表原稿

・複数コーディネーターによる校内委員会の運営-行動面の問題から学力支援まで:COMPASによる保護者を含めた複数の支援チームによる効果的な支援- :日本LD学会
 古田島・福原・長澤(2006)

・特別支援教育における児童問題行動の動画を含む教育電子カルテ開発:第26回日本生体医工学会甲信越支部大会
 永森正仁・能登宏・長澤正樹・植田真臣(2006)
 pdf資料があります。

・ソーシャルスキル支援とスクリプト−チャレンジルームの活動とSST:第44回特殊教育学会シンポジウム
 金谷篤・長澤正樹(2006)
 パワーポイント資料があります。メールで請求してください。

・発達障害児を持つ保護者と教師への協働行動コンサルテーション−効果的な支援を行うための体制整備−(同上)
 西村沙織・松岡勝彦・長澤正樹(2006)

・自閉症生徒に対する社会的相互交渉スキルの獲得支援−ゲーム場面における指導を通して−(同上)
 武田守弘・松岡勝彦・長澤正樹(2006)

ICTを用いた特別支援教育の実践及び事例データベース構築:電子情報通信学会
 永森正仁・植野真臣・浅井達雄・長澤正樹(2006)
 テレビ会議システムによる教育相談、e-Learningによる通常学級の教師支援の取り組み。論文はここで見られます。

音読による読解力と作文による書字力の向上−読み書き障害が認められた高学年男子児童への指導:日本LD学会第14回大会
 渡邊正基・長澤正樹(2005)
 読み書き障害と思われる男児2名に対して、言語通級指導教室において、音読におる読み能力の向上、身近な話題を題材にして話し合いをし、作文を書くことにより文章量の向上を図った。

高機能自閉症の大学生に対するソーシャルスキル獲得の支援−スペシャルオリンピックスの活用を通して−:日本LD学会第14回大会
 皆川幸子・長澤正樹(2005)
 スペシャルオリンピックスのボランティアとして参加している高機能自閉症の大学生に対して、ソーシャルスキル獲得をめざした指導を実施した。その結果、あいさつスキルを獲得し、日常生活でもスキル使用が可能になった。

特別支援教育を目的としたeラーニングの実践:日本教育工学会
 永森 正仁, 植野 真臣, 高羽 絵美,淺井 達雄 (長岡技術科学大学),長澤 正樹 (新潟大学)
 (資料請求できます)

・知的障害のある児童への「7並べ」の指導:日本特殊教育学会第42回大会発表論文集
 山口陽子・長澤正樹(2004)
 知的障害のある児童2名に対し、余暇スキルの獲得訓練としてトランプの7並べを導入した。手続き理解のための支援教材を用いることにより、7並べの基本的スキルを獲得することができた。

・LDのある生徒の接触行動の低減と社会的スキルの獲得:日本特殊教育学会第42回大会発表論文集
 谷崎美奈・長澤正樹(2004)
 女性に対する接触行動が頻繁に見られるLDの中学生に対して、日常生活場面を使って接触行動の低減とそれに代わる社会的スキルの獲得を目的とした訓練を実施した。会話まなボードや自己評価カードなどにより、目的を達成することができた。

・COMPASによる通常学級に在籍するADHDの児童への支援:日本特殊教育学会第42回大会発表論文集
 古田島恵津子・長澤正樹(2004)
 通常学級に在籍するADHDの児童に対して、COMPASに従った包括的な取り組みを実施した。その結果、約6ヶ月間で同級生への暴力は減少し、現場からCOMPASを支持する評価を得られた。

・軽度発達障害のある中学生グループ支援とその有効性 ―参加者本人・保護者への意識調査の結果分析から―:日本LD学会第13回大会発表論文集,314.
 古田島恵津子・長澤正樹(2004)
 軽度発達障害のある中学生の活動を支援し、彼らの自分や仲間に対する意識や、保護者の認識がどう変わったかを明らかにした。

・学生による学習支援ボランティアの実態とその効果:第41回日本特殊教育学会
 宮下圭奈子・長澤正樹(2003)
 大学生が、ボランティアとして小学校の学習を支援する活動の実態と効果について検証した。

・代替コミュニケーション機器、トーキングカードの開発:コミュニケーション発達支援とスクリプト研究会第3回研修会。
 山崎聖一・長澤正樹・大河政志(2003)
 本研究の目的は、ことばに代わるコミュニケーション機器(AAC)及び既製のAAC利用を支援する機器、「トーキングカード」の開発である。トーキングカードとは、MOサイズの音声録音カードで、表面にメッセージの絵や写真を貼り、あらかじめ録音しておいたメッセージを、絵や写真をさわることで表出する機能を持つ。重度知的障害のある子どものコミュニケーション手段や、既製のコミュニケーション機器の練習教材として、また、点字学習の教材として期待される。

・学習障害のある児童に対する人とのかかわり方の指導。―支援教材「会話まなボード」を使って―(学会発表):日本特殊教育学会第40回大会発表論文集、434.
 細井恵美・長澤正樹(2002)
 状況認知が苦手なLDの児童に対し、対人関係のトラブルを減少させ良好な人間関係を築く支援を行った。トラブルを起こした状況の分析や心情の理解、さらに好ましいソーシャルスキルの獲得のための支援教材として、「会話まなボード」を導入した。「会話まなボード」とは、「見える」カウンセリングの道具として、さらにはロールプレイを促進する教材として開発した。

・通常の学級に在籍するSENのある児童に対するボランティアの導入に関する小学校教師の意識調査。日本特殊教育学会第39回大会発表。
 河治巳美子・長澤正樹(2001)
 通常の学級を対象に、ボランティアの導入に関するアンケート調査を実施した。行事や授業など、どのような場面で、どのような資格のあるボランティアを受け入れるか、分析した。

・インターネットを利用した教育相談の実際:日本発達障害学会第36回大会発表。
 
長澤正樹(2001)
 インターネットを利用した約3年間の教育相談の実際と課題について発表した。約118件の相談があり、186件のアクセス数だった。最も多い相談内容は指導上の悩みで、次に情報収集が多かった。課題として、相談体制の整備(システムの構築)、個人情報の保護などがあげられた。なお、発表論文が必要な方は、添付ファイルで送ります。

・個別教育計画と個別の指導計画:第23回日本教育大学協会全国特殊教育研究部門合同研究集会分科会発表。
 長澤正樹(2001)
 アメリカの個別教育計画(IEP)の性格と改正されたIDEAによる影響を解説した。さらに、日本の個別の指導計画の性格と実際に作成されている個別の指導計画を紹介した。最後に、個別の指導計画の問題点と課題についてまとめた。なお、会場で紹介した個別の指導計画については、メールでお問い合わせください。

・「知的障害養護学校高等部における職業指導に関する調査研究」:第38回日本特殊教育学会
 執筆:秋山ゆき江、長澤正樹
 新潟県下越地区の知的障害養護学校高等部(高等養護学校を含む)の卒業生を対象とし、平成8年度から3年間の進路状況についてアンケート調査した。その結果、企業就労率が全国レベルより高い、養護学校中学部卒の生徒の方が企業就職率が高いなどの結果が得られた。