中部日本から発見されたコウホネ属の新雑種Nuphar xfluminalis

志賀 隆(大阪市立自然史博物館)・角野康郎(神戸大学理学部生物学科)

Shiga T. & Y. KadonoNuphar xfluminalis, a new hybrid from central Japan

 栃木県において発見されたコウホネ属の新種シモツケコウホネNuphar submersaの調査を進める中で,シモツケコウホネやコウホネN. japonicaに似ているが,どのコウホネ属の分類群にも当てはまらないコウホネ属植物を数集団見つけた.これらと中部から東北にかけてシモツケコウホネとコウホネと考えられる集団を含めてサンプリングを行い(9集団86個体),形態形質10形質,酵素多型分析と花粉稔性の調査を行った.形態形質に基づくクラスター分析では3つの大きなグループが得られ,そのうち2つがコウホネとシモツケコウホネに対応した.残りのグループは特徴的な形質を持たず,2種の中間的な形質を示した.また,酵素多型分析では種特異的マーカーを2遺伝子座(lap1mdh3)で得ることができ,ヘテロ遺伝子型の個体は中間的な形態形質を示した.また,花粉稔性では中間形はコウホネ(92.3%±4.6%)やシモツケコウホネ(93.1%±3.5%)に比べて低い値を示した(35.5%±14.1%).以上の結果より,コウホネとシモツケコウホネで種間交雑が生じていると結論し,N. xfluminalis(ナガレコウホネ)として記載した.このナガレコウホネは農業用の水路など水位変動が激しい環境にも生育しており,親種とは異なる環境に侵入して定着した雑種であると考えられた.

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