ヒメコウホネの分類学的な問題点

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さて,僕が現在研究対象としているヒメコウホネのお話です.
読んでいるうちに訳がわからなくなるかもしれませんがお付き合い願いたいと思います.


ヒメコウホネ(Nuphar subintegerrimum (Casp.) Makino)は,コウホネ属の他の分類群と同じ様に,湖沼,ため池,河川などに生育している抽水〜浮葉性の水生植物です.
下の写真がタイプ標本(MAK所蔵)ですが,西日本に生育するヒメコウホネがこのタイプと同一の植物なのかどうか,近年疑問視されています

 ヒメコウホネのタイプ標本(MAK所蔵)

また,西日本に産するヒメコウホネは近縁種であるコウホネ(Nuphar japonicum DC.)と識別が難しい中間的なものがしばしばみられます.

そこで,タイプ標本と同じタイプのヒメコウホネは,現在は東海地方に数産地見られるので,「東海型ヒメコウホネ」,後者を「西日本型ヒメコウホネ」と呼んで,近縁種であるコウホネを含めて研究を進めています.
「東海型」「西日本型」というのはあくまで便宜上のものです

関係をまとめるとこんな感じです.


ぱっと見ただけでも,「東海型」と「西日本型」はなんか同じ植物なのか首を傾げてしまうのではないでしょうか.ですが,現行の分類方法で調べると「西日本型」はヒメコウホネとして,同定されてしまうんです.うーん,困りました.

見分けやすい形態的な特徴を挙げますと・・・

 東海型ヒメコウホネ・・・小型,円形の抽水葉,浮葉,沈水葉を持つ
 西日本型ヒメコウホネ・・・やや大型,卵形〜長卵形の浮葉を卓越してつける
                 卵形の沈水葉を持つ
 コウホネ・・・大型,長卵形の抽水葉を卓越してつける
         細長い沈水葉を持つ

具体的に葉の標本を示すとこんな感じです.


しかし,実際は西日本型ヒメコウホネともコウホネともつかないものが野外では見られます.さて,本当に困りました.このわけのわからない植物をどういうふうにまとめればいいのでしょう.

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