会の紹介

1.趣意書
2.規約


<趣意書>

「コミュニケーション発達支援とスクリプト研究会」に参加しませんか
 共にコミュニケーション支援のあり方を考え、実践しましょう


 スクリプトを用いたコミュニケーション発達支援の研究論文がわが国で初めて出されてから10年が、また「スクリプトによるコミュニケーション指導」(川島書店)が出版されてから3年がたちました。この間に、スクリプトを用いたコミュニケーション発達支援に関する多くの研究論文が出され、また療育・教育現場での実践も活発に行われるようになってきました。
 そこで、唐突ですが、スクリプトによるコミュニケーション発達支援の基本的な考え方をごく簡単に説明します。

@子どもの発達と特長(実態)の評価から、長期・短期の目標を決めます。
A子どもの目標が達成されやすいような、日常生活(朝の会や給食等)やゲーム場面(ボーリング、魚釣り等)などをアレンジして、スクリプト(脚本)化します。
Bスクリプトの中の要素に、コミュニケーションの理解と表出についての子どもの目標をいくつか設定します(例えば、<表出>では給食の場面で教師に『バターとジャムどっちがいい?』と聞かれ、欲しい方を見てはいるがジェスチャーでは要求できない場合、目標は「欲しい方に手を差し出すジェスチャーをする」とします)。
C子どもの目標達成のために、大人の側が、かかわり方を段階的に調整していくように計画します(教師が尋ねると欲しい方を見ているが、指さしができないとき、(i)数秒待ってから、(ii)指さしのモデルを示し、(iii)できない場合には身体援助で手を伸ばしてあげる等)。
Dスクリプトを構成する際には、<理解>と<表出>のバランス、<要求伝達>や<相互伝達(叙述や共感等)>などの伝達機能間のバランスが重要になります。
★このような工夫や手だてによって、子どもがスクリプトを獲得して自発的に活動に参加し、大人と、また子ども間で自分自身の意図を他者に伝え、他者の意図も受け取るという、より豊かなコミュニケーションを実現できるように支援していきます。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 これまで、このような支援方法の提案を行ってきたわけですが、この間、日本の障害児教育においては個別教育計画の作成が奨励され、また1999年の学習指導要領の改訂では自立活動の内容として「コミュニケーション」が明確に位置づけられました。その結果、多くの障害児教育や療育の関係者の間で、もう一度コミュニケーションのあり方について考えてみたい、具体的な支援のあり方を検討してみたいという気運が高まってきており、そのための基礎研究、具体的な実践研究の展開が待ち望まれています。そこで、このようなコミュニケーション支援への関心の広がりの中で、研究の発展と療育・教育現場での実践的な情報の交流を目的にして研究会を立ち上げることにしました。
 この研究会では、以下の3つの観点からコミュニケーション発達支援において「スクリプト」を用いることの意義を捉えています。
1.個別教育計画から授業へのインターフェース(仲介)としてのスクリプト
一人ひとりの子どもの個別教育計画に取り入れられたコミュニケーション課題を、複数の子どもからなる「授業」の中でどの様に達成するか、また、一人ひとり発達段階の異なる子どもに、どのような手だてを用いるかを考えることがスクリプトによる発達支援ともいえます。やりとり遊びなどのフォーマットも広い意味ではスクリプトに含まれます。研究会をとおして、様々な障害のある子ども、様々な発達段階の子ども、様々な場面で活動する子どもへのコミュニケーション発達支援スクリプト・プログラムを開発・創作していきたいと思います。

2.学校・家庭・地域との連携のためのインターフェースとしてのスクリプト
具体的な活動であるスクリプト・フォーマットは、あるお子さんを取り巻く人々の連携をより容易に、活発にします。例えば、担任があるスクリプト(給食)を試みているとします。同じような活動は家庭の夕食場面でも行われるでしょう。家庭でも学校と同じような手だてによって段階的な支援が可能です。対象となるお子さんが主役の同じ「食事」というスクリプトですが、学校と家庭では脇役やディレクターが異なるという違いです。でも、場面は違っても子どもは生き生きと主役を演じられるわけです。同じように、自立活動担当教員と学級担任との連携や、通級指導教室教員と通常学級の教員との連携、学校と地域(社会活動や就労先)との連携など、様々な形で威力を発揮するでしょう。とかく理念先行の傾向のある連携論、交流教育・統合教育などに具体的な方法論を提案していきたいと考えています。

3.基礎科学の連携のインターフェースとしてのスクリプト
このスクリプトによるコミュニケーション発達支援の考え方には、この30年間ほどの認知科学、発達科学、行動科学の成果が集約されています。人間の生涯発達、コミュニケーション発達にとって生活環境、社会文化的な環境の重要性が認識されつつあります。子どもが、どのように生活文脈を認識し、コミュニケーションが可能になっていくのか、そこで大人はどの様に文化へと誘いかけを行っているのか、障害のある子どもたちはどの様な困難性をもち、どの様な支援を必要としているのかが研究されてきました。今後も、スクリプトをキーワードにし、これらの科学の学際的研究の発展が期待されます。日本では、とかく対立的に捉えられやすい発達科学と行動科学を、子どものコミュニケーション発達支援の観点から統合させた、「発達・行動科学」の創出を目指したいと思います。 

 このように、コミュニケーションとスクリプトをインターフェースとした様々な広がりをもった研究会にしたいと思います。まとめると「共に育ちゆくためのインターフェースとしてのスクリプト」といえるかもしれません。(1)子どもと子どもが、(2)子どもと周囲の様々な人が、(3)様々な学際領域が、共に育ちゆくために。
 研究会というと堅いイメージがあるかもしれません。しかし、半分は「スクリプト同好会」にしたいと考えています。養護学校や特殊学級などで、こんなスクリプトを使って指導をしたらA君は今までみられなかった行動を示してくれた、教師との間でこんなコミュニケーションが可能になったなど、実際に支援を紹介し合い、互いの明日の指導に取り入れていきたいと考えています。ワイワイ、ガヤガヤ楽しくスクリプト自慢をしたいと思います。スクリプト・フォーマットのデータ・ベースをインターネットのサイト上に構築し、多くの人々と共有するプランももっています。
もう半分は、スクリプト支援の研究を発展させる活動にしたいと考えています。発達科学、行動科学の観点から、スクリプトの発達過程、スクリプトによる発達評価、スクリプトによるコミュニケーション支援方法の実験研究など基礎的な研究を報告してもらい、それに対してみんなでコメントし合い、学び合います。特に、大学院修士課程・博士課程の学生の研究をみんなで支援していきたいと思います。また、文献の紹介、勉強会なども行っていきたいと考えています。
 スクリプトとコミュニケーションをキーワードとして、実態把握・評価から出発し、真に一人ひとりの意図を重んじることができるような授業作りや家庭・地域との連携を目指し、障害児教育はもとより、日本の教育・福祉を変えよう、という意気込みで出発したいと考えています。


「コミュニケーション発達支援とスクリプト研究会」規約

1.名称:本会は、「コミュニケーション発達支援とスクリプト研究会」と称する。また、英文を"Association of Scriput for Communication Development"とする。
2.事務局:本会は、当分の間、事務局を横浜国立大学教育人間科学部内に置く。
3.目的:特別な教育的ニーズのあり子どもに対するコミュニケーションのあり方、及び具体的なコミュニケーション発達支援のあり方について、スクリプト獲得の観点から検討し、またそのための研究の発展と教育・療育現場での実践的な情報の交流を図ることを目的とする。
4.構成:本会は、会の目的に賛同する研究者・学校関係者・療育関係者・養育者等によって構成される。
5.組織:本会は、次の役員を置く。会長1名、事務局長1名、運営委員若干名。
6.役員の選出と任期:本会の役員は次の方法により選出し、任期は2カ年とする。ただし、再任を妨げない。
7.運営と活動:総会を年1回、研修会を年数回開催する。研修会は啓発活動も兼ね、広く会員以外にも参加を呼びかけていく。また、ニューズレターを年2回発行する。会費制とし、年会費を1000円とする。なお、事業年度を4月1日から翌年3月31日までとする。
8.会則の改正:本会の会則の改正は、総会に出席した会員の3分の2以上の同意を必要とする。

附則
本会は、2002年3月に発会とする。