塩野文庫旧蔵新潟師範学校関係資料

 この資料は、官立新潟師範学校の生徒であった塩野自謙氏が、同校在学中に作成した筆写本であり、塩野自謙氏の御子孫より、新潟大学教育人間科学部(当時。現在の教育学部)に寄贈されたものである。御子孫によれば、塩野自謙氏は、信州松代藩士の子どもとして生まれ、官立新潟師範学校修了後は、松代地域の小学校教員・校長などを勤めたという。

筆写本は、以下の10冊から成る。
  @ 「平算雑題」
  A 「雑算備忘」
  B 「雑比例答式」
  C 「化学抜萃」
  D 「按分逓析比例問題并答式・洋算新書」
  E 「洋算新書和較比例答式」
  F 「魯氏一元一次方程問題」
  G 「雑比例題」
  H 「雑比例答式」
  I 「窮理学」

 いずれも数学と理科に関する教科書を筆写したものである。ロビンソン数学書・百科全書化学篇・物理階梯などの翻訳教科書が元本であると考えられるが、官立師範学校時代の生徒が作成した筆写本・ノートなどはこれまで知られておらず、その意味で貴重な資料といえる。

 このうち@の「平算雑題」には「皇紀元二千五百三十六年 明治九年七月二日新潟師範学校西校舎九室於開化燈之下謄之」とする塩野氏の書き込みがみられる。同様にCの「化学抜粋」にも、「九季十二月新潟師範学校玻璃窓下おゐて謄写之 志保野庫書」と記しており、官立新潟師範学校が廃止となる前年(明治9年)に、塩野氏がこれらの教科書を学んでいたことがわかる。ガス燈やガラス窓など、当時まだめずらしかったであろう文明開化の利器の下で、近代的な知識の普及者として学ぶ師範学校生徒の生活のひとこまを示すものである。